心理療法

カウンセリングという言葉を辞書で調べてみると、「相談すること」というふうに書かれています。
ですから一般的には、自分の問題や悩みを、カウンセラーのところへ出向いて相談すると、カウンセラーがどうすればよいかという答えや指示を与えてくれるというふうに思われているようですが…
実はちょっと違います。
たとえば、あなたが美容についての悩みや問題をその専門家に相談した場合、それに対する適切なアドヴァイスや答えが得られると思います。
しかし心の問題や悩みを、その専門家であるはずのカウンセラーのところへ出向いても、通常その答えはカウンセラーから得られません。

なぜなら、あなたの中に問題や悩みがあるとしたら、その答えもまたあなたの中にあるからです。
また本来、その悩みや問題を解決し乗り越えていく力も、あなたの中にあり、それを引き出すお手伝いをするのが、カウンセラーの役目であると考えられています。
よって、私どものカウンセリングで一番大切にしていることは、まずはクライアント(相談者)の話をじっくり聴かせていただくということです。(これはロジャースの来談者中心療法)に基づいています。
では一体、なぜカウンセリングにおいて、話を聴かせていただくことがそんなに大切なのか、また話すことがどんな作用をもたらすかについてお話させてもらいましょう。

こころの循環を図る

今まで、一人で抱えてきた悩みや問題を、カウンセラーに話すということで閉ざされていこころが開かれます。
誰でも心を閉じたまま、自分ひとりだけで悩みや問題を抱えたままでいると、知らないうちにどんどんとネガティブな思考に陥ってしまいます。
本来、悩みや問題にまつわる感情は、心配や不安、恐れや怒り、または悲しみや恨み etc… それらすべてはネガティブな感情です。
それらの感情から解放されるには一度こころをオープンにする必要があります。
単純に考えていただくとわかると思うのですが、こころを開く、つまり自分のことを話すということがネガティブな感情を外に吐き出す出口もつくるというわけです。
出口のない状態は体にたとえると悪いウンチがいっぱい溜まっている状態と一緒です。この状態にあるときは、どんなに栄養のある食物をとってもうまく吸収されませんね。
こころも体と同様です。
こころが便秘状態のときは、どんないい考えやアドバイスも意味をなしません。
カウンセラーの質問にしたがって、自分の内側にある感情を、どんどん外に吐き出していくと、こころに新たなスペースができます。
そのスペースに、今後の自分をより良く生きるための新たな思考が生まれ、またそのために必要なアドバイスなども取り込んでいかれるようになります。
このように、こころを開くことによって、こころの便秘状態が少しずつされ、こころの循環を図ることができるようになります。

自分自身のことを客観的にとらえるもう一人の自分

話すという作業を通して、脳の中ではいろいろな活動が促されます。
人は話すということをしながら、同時にその問題や悩みを整理し、客観的にとらえることができるようになっていきます。
カウンセリングを受ける前は、ほとんどの人が、いろいろな問題や悩みが毛糸だまのように絡まったままで、どうしたらいいのかわからない状態に陥っておられます。
でも話していくことで、その問題を抱えた自分を、もう一人の自分によって冷静に見つめなおすことができるようになります。
これはサイコセラピー(心理療法)がめざす、本来どの人の中にもある自分自身を治す力を引き出すことにつながります。

こころを癒し浄化する

私達は自分の悩みや問題を、じっくりっ聞いてもらうということによってこころに安心感を得ることができます。自分の話すことを誰にも否定されず、真剣に、叉共感的に聞いてもらうことで、こころは次第に癒されていきます。
カウンセリングの最中に、いろいろなことを思い出されて泣き出す方も見えます。また肩を震わせながら、怒りでいっぱいの気持ちを吐露された方もみえます。
どんな感情にも、正しい、間違いはありません。どんな感情にもその人の理由があって湧き出たものですから。
あなたが感じたことを否定する必要など全くありません。
むしろクライアントさんが、感情を自由に表現すればするほど、こころは浄化されていきます。
まだ小さかった子供の頃を思い出していただくとその感覚が想像できると思うのですが…思いっきり泣いた後、なんだかちょっとすっきりした感覚、覚えてますか?
この感覚がこころの浄化作用です。

話すことで自分と向き合う

カウンセラーの質問にしたがって、あなたの内側にある考えや気持ちを外に出すことで、あなたはあなた自身のことをもっと感じられるようになっていきます。
なぜなら色々なことに対して、あるとらえ方(認知)をし、そのとらえ方によっておこる(感情)の集大成があなたがだからです。
もしかしたら、自分が感じていることをそのまま感じてはいけないという、こころの作用があるために、本来の自分が閉じ込められたまま、自分とは違う自分を生きている可能性もあります。
もしそうだとしたら、何をしても自分のこころが満たされることはありません。
またいつも不快な感情があるのは、その人の物事のとらえ方(認知)に歪みや問題があるために、そのような感情を抱えたままでいる状態なのかもしれません。
もしそうだとしたら、自分のことを好きになることはとても難しい状態にあるといえます。

人によっては、このようなこころの状態が体に現れる場合もあります。
たとえば頭痛、めまい、肩こり、不眠、動悸、慢性胃炎、下痢、脱毛症、生理不順、皮膚炎 etc…。
また引きこもり、パニック症状、過食、拒食、脅迫的神経性の症状、不登校、アルコールやドラッグ、または人に極度に依存する症状など行動に現れる場合もあります。
これは本来の自分と、実際の自分が大きく食い違っていることの現れだといえます。
つまりほとんどの原因不明の体の症状や行動は、実は自分と自分の関係性に大きな歪みや隔たりがあるからだと考えられています。
それゆえカウンセリングの場では、自分を知ることの重要性が大きく掲げられています。

また人は自分のことを知った分だけ、他者のことも理解できるようになります。
なぜなら自分を知るということは、他者とは違う自分の部分を、肯定することに繋がっているからです。
このことによって、他者と自分を比べたり、競争したりすることから解放され、自分のこころに穏やかさを取り戻すことができるようになります。
また他者との対人関係も、以前より楽になっていきます。
いずれにしてもカウンセリングというのは、心の問題や悩みを話すことになるので、それにふさわしい環境が必要です。
それは自分自身が落ち着ける場所で、また話すことの秘密が十分に守られていると感じられる場所です。

人と人とが心をふれあうことの大切さ。

また何より一番大切なことは、カウンセラーが自分のことを安心して話せる相手だと感じられることです。
これは人間である以上、お互いの相性みたいなものがありますからやはり一度はセッションに臨んでみないとその判断は難しいと思います。
それゆえカウンセラーを務める私のことは、このHPにおいて、できるだけオープンにしてみました。
こころの病はその因果関係がはっきりしない最もたるものであるゆえに誰しもどういった専門機関へ行くべきか迷うところだと思います。
またすでに薬物療法を受けていらっしゃるにもかかわらず、何かしっくり来ないままどうしていいか途方に暮れていらっしゃる方もおられると思います。
またそうでなくても、一度自分と向き合う必要があると感じていらっしゃる方もおられると思います。
いずれにしても、「こころ」というものに対して、根本的な対応ができるのは、「人」のみだと思います。
鉄のものを治すには鉄、木のものを治すには木を使うのが道理であるように、人のこころは人によって治癒していくものだと思います。
それゆえカウンセリングにおいては、クライアント(相談者)とカウンセラーがこころを触れ合わせながら、信頼関係を築いていくことがもっとも大切なことだと思います。
当相談室では、クライアントさんが、こころから安心して、心地よくご自分のことを話せる場であるよう努めています。
またご相談内容の守秘義務の遂行を、固くお約束いたします。